押入れから王子が出てきましたよ?
 


 次の日、いつものように押入れにもぐり、王子たちの許に行くと、
「紬!
 明日の戦はなくなったぞっ」
と王子が言ってきた。

「えっ?
 なんでですか?」

「いや、この間、敵の使者が来たとき、お前が火を放てと言ったのを聞いていたらしいんだ。

 敵軍も布製の人形を用意していたらしく、焼き殺されてまで、作物も妾もいらんという話になって、次の戦には出ないことにしたそうだ。

 不戦敗だ!」

「そ、そうなんですか……」

「人形師が軍師も兼ねていると噂になっているようだが。

 私は、向こうの使者に言われてしまったぞ。
 あのような恐ろしい女でよいのですかと」

 それは王子が個人的に言われたことのようだった。

 いや……だから、ちょっと言ってみただけなんで。

 っていうか、普通の発想じゃないですか。

 ……ねえ?
と思っていると、

「だが、まあ、お前のおかげで快勝続きだ。

 ……あと少しで、この戦いも終わるな」

 王子は、しんみりとそんなことを言ってくる。

「来年もまたマスコットを使われます?
 そうなら、なにか考えておきますが。

 ああでも、もう私の人形に対する戦略も練られてるでしょうし、来年は無理かな」

 これでお別れか。

 そう思うと、寂しくもある。

「……もう会えぬのか? 紬」

 ぼそりと王子はそう言った。
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