押入れから王子が出てきましたよ?
 中学のとき、手芸部だったのだ。

 文化祭には間に合わず、作りかけの首だけが、ゴロゴロ残った。

 髪も顔もついてないのもたくさんある。

 今、その首が一個ずつ、動いては転がる。

「お、王子……。
 これでは転がることしか出来ません」
と口のある首が訴えていた。

 それはそうだろうな。
 っていうか、このお内裏様は王子なのか、と思っていると、王子は言ってきた。

「おい、お前。
 人形を作る道具とこいつらを持って私について来い」

「えー」

 紬は不満の声を上げたが、
「やらぬのなら、これで刺すぞ」
と王子は縫いかけの首についていた、糸つきの針を人形の手でつかみ、チクチク足の甲を刺してくる。

 うわー、地味に嫌な攻撃だな。

「わかりました。
 ついて行きますよ~」

 まあ、どうせ、夢だろうしな……。

 紬はその首の詰まった袋と針と糸を持つと、お内裏様のあとについて、押し入れの中に入っていった。


 
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