押入れから王子が出てきましたよ?
押入れの中は違う空間へと繋がっていた。
暗い押し入れに入ったつもりが、何故かそこは白樺の林の中で霧が薄く張っていた。
幻想的だな、と思いながら、紬は白樺の木を見上げる。
白樺は紬の世界のそれと同じくらいの大きさだった。
「ミニチュアな世界なのかと思ってました」
と言うと、
「莫迦め。
私の本体は、お前とサイズは変わらん。
とり憑いたこの人形が小さいだけだ。
これでどうやって戦えと言うのだっ」
と勝手に人形にとり憑いておいて、王子は文句を言ってくる。
どうやら、この世界では、戦争のときには、それぞれが人形に入って戦うことになっているらしい。
だから、みな、優秀な人形師を探しているらしいのだ。
「何故、人形に入って戦うんですか?」
「生身で戦ったら、死ぬではないか」
「……ぬるい世界ですね」