会いたいけど、会いたくない
『このストーリー性のある感じが大好きです』

私はお気に入りのイラストレーターさんのSNSにコメントを残す。

すると、しばらくして返信の通知が来た。

返信!?

人気のイラストレーターさんは、コメント数も多いし、ほとんど返信はしない。

不思議に思いつつ、私はSNSを開く。

『ですよね! 僕も誰が誰を想ってるのかがよく分かるこの感じが大好きなんです』

返信をくれたのは、同じようにそのイラストレーターさんのファンだと言う男性。

アカウント名はU。
ただ一文字。

プロフィールに男性と書いてなければ、性別すら分からない。

そのままそのコメント欄で盛り上がった私たちは、相互にフォローし合い、仲良くなった。



Uさんは、美大の1年生らしい。

高校2年生の私とは2つ違い。

家はちょっと遠くて、ここから新幹線で2時間くらい。

私はちょっとほっとした。

仲良くなったUさんと会いたい気持ちはあるものの、会った瞬間に嫌われるのは目に見えてる。

だって、私は子供の頃から太っているから。

なのに名前は細井 麻弥(ほそい まみ)

小学生の頃は、クラスの男子から、

「太いのに細井」

とよく揶揄されて嫌な思いをしてきた。

クラスの男子から、私は女として見られてないことは、分かりすぎるくらい分かってる。

頑張ってダイエットしようと思うけれど、16年ため続けた脂肪はなかなかなくなってはくれない。



そうして、毎日のようにSNSでやり取りをする私たちだったけれど、ある日Uさんが文字じゃなくて直接話したいと言い出した。

声を聞きたい。

それは私も同じ。

日々、惹かれていくUさんと直接会話してみたい。

私たちは、通信アプリのIDを交換した。

Uさんの通信アプリのアカウント名は、“優也”。

きっとこれが本名なんだろう。

優也さんかぁ。

優しくて穏やかな人柄にぴったりの名前。

それから、毎日のように優也さんから通話がある。

好きな絵の話やその日の出来事などの取り留めのない話をして1日を終える。

< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop