腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
借金と事故物件と
そして冒頭に戻る。
「どうしよう……」
航大に家財を持ち逃げされたと気付いた私が、まず心配したのはお金の問題だった。貧乏育ちの性なのか、我ながら現実的な性格だ。
結婚を予定して退職してしまったし、一刻も早く職を見つけてお金を稼がなければならない。などと、感傷に浸るよりも先に冷静に今後について考えを巡らせる。
それにしても……航大のやつ、許せない。もし私がこのまま体調も悪く働くこともできずに飢えて死んだら化けてでてやる。呪ってやる。
そうでも思わないと気持ちを強く保てない。
とにかくまずは警察? いや、どうせすぐに航大の居場所が分かるわけでもないし、何だか未練たらしく追いかけ回すみたいで気が引けた。
そんなことより職探ししようとスマホを取り出し求人情報を見始めたところで、突然知らない番号から電話がかかってくる。
「もしかして航大……? やっぱり何か事情があるの?」
たった今呪った相手だというのに、僅かながら残った希望が捨てきれずコール一回で応答してしまう。しかしもちろん、相手は航大ではなかった。
『あ、鈴白聖南さん? あの〜わたくし安心安全の日の丸金融の者ですけどぉ』
「はい、そうですけど……。って、え? 日の丸金融??」
関西弁で胡散臭い金融機関を名乗る相手に、私は嫌な予感しかしない。相手は取り繕ったような猫なで声でこう宣う。
『えーっとですねぇ、実はうちから融資させていただいていた三浦航大さん、連絡が取れなくなってしまいまして……連帯保証人の鈴白さんに連絡差し上げた次第でして〜』
……きた。嫌な予感的中。どうせ闇金でしょ。それなのに安心安全とか日の丸なんて名乗らないでほしい。安心安全と日の丸に謝れ。
心の中でぼろくそに扱き下ろすけど、もちろんそんなこと口にはできない。
『金額はですね……利子も含めて五百万になりますね』
「は? へ? ご、五百万????」
五百万ってなに? 単位は? ドン? ウォンまでならギリギリ許す。
『では五百万円、ご用意お願いしますね。今から速やかに伺いますんで〜』
ガチャン、と雑な音を立てて電話は切られた。
残念。単位はもちろん円だった。
「どうしよう……」
航大に家財を持ち逃げされたと気付いた私が、まず心配したのはお金の問題だった。貧乏育ちの性なのか、我ながら現実的な性格だ。
結婚を予定して退職してしまったし、一刻も早く職を見つけてお金を稼がなければならない。などと、感傷に浸るよりも先に冷静に今後について考えを巡らせる。
それにしても……航大のやつ、許せない。もし私がこのまま体調も悪く働くこともできずに飢えて死んだら化けてでてやる。呪ってやる。
そうでも思わないと気持ちを強く保てない。
とにかくまずは警察? いや、どうせすぐに航大の居場所が分かるわけでもないし、何だか未練たらしく追いかけ回すみたいで気が引けた。
そんなことより職探ししようとスマホを取り出し求人情報を見始めたところで、突然知らない番号から電話がかかってくる。
「もしかして航大……? やっぱり何か事情があるの?」
たった今呪った相手だというのに、僅かながら残った希望が捨てきれずコール一回で応答してしまう。しかしもちろん、相手は航大ではなかった。
『あ、鈴白聖南さん? あの〜わたくし安心安全の日の丸金融の者ですけどぉ』
「はい、そうですけど……。って、え? 日の丸金融??」
関西弁で胡散臭い金融機関を名乗る相手に、私は嫌な予感しかしない。相手は取り繕ったような猫なで声でこう宣う。
『えーっとですねぇ、実はうちから融資させていただいていた三浦航大さん、連絡が取れなくなってしまいまして……連帯保証人の鈴白さんに連絡差し上げた次第でして〜』
……きた。嫌な予感的中。どうせ闇金でしょ。それなのに安心安全とか日の丸なんて名乗らないでほしい。安心安全と日の丸に謝れ。
心の中でぼろくそに扱き下ろすけど、もちろんそんなこと口にはできない。
『金額はですね……利子も含めて五百万になりますね』
「は? へ? ご、五百万????」
五百万ってなに? 単位は? ドン? ウォンまでならギリギリ許す。
『では五百万円、ご用意お願いしますね。今から速やかに伺いますんで〜』
ガチャン、と雑な音を立てて電話は切られた。
残念。単位はもちろん円だった。