腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
再会
「ん……」
意識を取り戻したのは、昼間に受診した火野崎大学医学部附属東京病院の救急外来だった。
「あ、鷹峯先生、鈴白さん目を覚ましましたよ」
「ああ、ありがとうございます。入山君」
若い男性の看護師さんが、私が目覚めたのに気が付いて付き添いの男性に声を掛ける。
ん? 鷹峯先生……って、まさか……。
「うへぇ……鷹峯さん……??」
私は素っ頓狂な声を上げて、ニコニコと笑みを浮かべる隣人、鷹峯さんの顔を見上げた。
「気分は如何ですか、鈴白さん?」
話を聞くところによると、鷹峯さんが仕事から帰ってきたら部屋の前で私が倒れていて、ここに車で運んでくれたらしい。
意識朦朧となりながらも、私は自分の財布から診察券と保険証を取り出したらしいけど全然覚えていない。
「この前お会いした時から貴女のことが気になっていたんです。今日受診した際の検査データを見せていただきましたが、やはり貧血が酷いですね。あと、栄養状態も悪い。入院して治療した方が良いレベルですよ」
気になっていた、だなんて。もちろん全然艶っぽい意味だとは思ってないけど、何だかドキッとする。
航大は私の心配なんか全然してくれてなかったもんな……。
「ちょっと柊真? 私の患者なんだから、勝手に説明するのやめてくれる?」
奥から出てきたのは、産婦人科医の吉高美怜先生。昼間も夜も働き詰めで、なお美しいのは何故ですか。
じゃなくて。
「え、いや……あの、お知り合いで?」
入院と言われたことよりもまず、美怜先生が鷹峯さんのことを親しげにファーストネームで呼んだことが気になってしまった。
「ああ……私達、同期なのよ。あ、ほら、紹介状書いたでしょ? こいつに診てもらおうと思って」
今持ってる? と美怜先生。私は鷹峯さんが一緒に運んでくれたバッグの中から、昼間にもらったばかりの紹介状を取り出して鷹峯さんに渡す。
「今日美怜から電話でコンサルを受けました。名字が違ったので、今の今まで貴女とは気付きませんでしたよ」
鷹峯さんはそう言いながら、私の渡した紹介状に目を通す。
そういえば、鷹峯さんには『三浦』と名乗ったことを思い出す。うう、こんな身バレのしかたは何だか体裁が悪い気がする。
「美怜、彼女の入院、本院でも良いですよね? 今日は連れて帰ります」
「ええ、もちろんよ」
短く会話を交わしたあと、鷹峯さんは私に向き直った。
「点滴もちょうど終わりますし、一緒に帰りましょう。送りますよ」
「あ、ありがとうございます……」
何だか当人の私が分からないままに話がどんどん進んでいってる。
鷹峯さんは手袋をして私の点滴を抜くと、入山さんという男性看護師さんに声を掛けて席を立った。
意識を取り戻したのは、昼間に受診した火野崎大学医学部附属東京病院の救急外来だった。
「あ、鷹峯先生、鈴白さん目を覚ましましたよ」
「ああ、ありがとうございます。入山君」
若い男性の看護師さんが、私が目覚めたのに気が付いて付き添いの男性に声を掛ける。
ん? 鷹峯先生……って、まさか……。
「うへぇ……鷹峯さん……??」
私は素っ頓狂な声を上げて、ニコニコと笑みを浮かべる隣人、鷹峯さんの顔を見上げた。
「気分は如何ですか、鈴白さん?」
話を聞くところによると、鷹峯さんが仕事から帰ってきたら部屋の前で私が倒れていて、ここに車で運んでくれたらしい。
意識朦朧となりながらも、私は自分の財布から診察券と保険証を取り出したらしいけど全然覚えていない。
「この前お会いした時から貴女のことが気になっていたんです。今日受診した際の検査データを見せていただきましたが、やはり貧血が酷いですね。あと、栄養状態も悪い。入院して治療した方が良いレベルですよ」
気になっていた、だなんて。もちろん全然艶っぽい意味だとは思ってないけど、何だかドキッとする。
航大は私の心配なんか全然してくれてなかったもんな……。
「ちょっと柊真? 私の患者なんだから、勝手に説明するのやめてくれる?」
奥から出てきたのは、産婦人科医の吉高美怜先生。昼間も夜も働き詰めで、なお美しいのは何故ですか。
じゃなくて。
「え、いや……あの、お知り合いで?」
入院と言われたことよりもまず、美怜先生が鷹峯さんのことを親しげにファーストネームで呼んだことが気になってしまった。
「ああ……私達、同期なのよ。あ、ほら、紹介状書いたでしょ? こいつに診てもらおうと思って」
今持ってる? と美怜先生。私は鷹峯さんが一緒に運んでくれたバッグの中から、昼間にもらったばかりの紹介状を取り出して鷹峯さんに渡す。
「今日美怜から電話でコンサルを受けました。名字が違ったので、今の今まで貴女とは気付きませんでしたよ」
鷹峯さんはそう言いながら、私の渡した紹介状に目を通す。
そういえば、鷹峯さんには『三浦』と名乗ったことを思い出す。うう、こんな身バレのしかたは何だか体裁が悪い気がする。
「美怜、彼女の入院、本院でも良いですよね? 今日は連れて帰ります」
「ええ、もちろんよ」
短く会話を交わしたあと、鷹峯さんは私に向き直った。
「点滴もちょうど終わりますし、一緒に帰りましょう。送りますよ」
「あ、ありがとうございます……」
何だか当人の私が分からないままに話がどんどん進んでいってる。
鷹峯さんは手袋をして私の点滴を抜くと、入山さんという男性看護師さんに声を掛けて席を立った。