腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
同意書へのサインが終わると、さっそく一緒にやって来ていた看護師さんに採血をされた。普通に痛い、てかどんだけ取るの? 献血(けんけつ)好きとはいえ貧血なのにこんなに血採って大丈夫? なんて内心思いながらも大人なので黙っておく。



その後は言われていた通りレントゲンとCT、それからMRI、エコー、脳波、胃カメラ────……数日間に分けて行われた数々の検査たち。



でもこんなのはまだマシな方だ。



「こ、骨髄穿刺(こつずいせんし)!? 何それ、怖い!!!!」

「最初に説明したでしょう? 頭と同時に貧血の検査も進めないといけませんから。貴女もちゃんと同意書にサインしてますよ?」

ぴらりと一枚の紙を目の前に突き付け、鷹峯さんが口角を釣り上げる。

それは紛れまもなく私がこの前サインした同意書の一枚だった。くっ……これならツボ買わされた方がマシだ。

ていうかこの人の笑顔、薄々気付いてたけどめちゃくちゃ胡散臭いわ。

「という訳で、私も時間が無いのでさっさとやりますよ。はい、動かないでー」

「ぎゃあああああああ!!!! 痛い痛い痛いよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

〈いやん、鷹峯さんったら強引〜♡〉

鷹峯さんの合図で看護師さん数人から押さえつけられたかと思うと、私は覚悟する暇もなく鷹峯さんにめちゃくちゃごつい注射器みたいなやつを胸に刺されて年甲斐もなく泣いた。






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