腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
不意に間合いを詰められ、顔が近付き、背中に回された手が腰を撫でる。

ざわりと身体が熱くなって、思わず固まる。

え、やっぱり見返りいるんじゃん!! 男なんてみんなクズなんだ!!

私はそう思うのに、私の身体を勝手に借りている彼女は大興奮で喜んでいた。

「なぁんて、冗談ですよ。面白い人ですねぇ、すぐに赤くなって────」

〈スキありよ!!!!〉

身体が勝手に動いた。普段は随分(ずいぶん)上の方にある鷹峯さんの顔が近付いたのをいいことに、春夏が背伸びして唇を狙う。

「っ!?」

〈もらったぁっ!!〉

唇と唇がぶつかる。




『潔癖症なので。キスは絶対無理です』




あ、やばい。これヤバいんじゃ?
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