腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
鷹峯さんの手が私の裸の胸に伸びる。下から支えるように胸を持ち上げられて、指先が先端を(はじ)く。私の腰がびくんと跳ねる。

「Do you waana have fun together after a long time?(久しぶりに私と楽しみましょう?)」

ていうか、え、何でさっきからちょいちょい英語? なんて言われたかよく分からない。

「Now,first……please give me a BJ as usual,Rose?(さてまずは……いつものように××して下さい、ローズ?)」

そして身体を下の方へ誘導される。え? なになに? なんて言った??

……っていうか、ローズ??

「……ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!!」

私の大声に、鷹峯さんは今度こそ目を見開く。

自分の上に(またが)っているのがローズさんじゃないことにやっと気が付いたって顔してる。

ローズさんってたぶんセフレの一人? 金髪の外国人?なんてハレンチなっ!

「……ああ、すみません。この胸のサイズはローズかと……寝ぼけてたみたいです。私何か言ってました?」

「言ってましたけど、半分くらい英語で意味が分かりませんでした」

「あはは、なら良かったです。ああでも、言われてみればローズはパイパ」

「言わせねぇよ?」

ったく胸で相手を当てるとかどんな特技だよ。しかも当たってないし。ていうかツッコミどころ満載過ぎ。

とはいえ、元はと言えば私が素っ裸で寝ている鷹峯さんに跨ったのが悪い。

「いやあの、こちらこそすみません……春夏が勝手に……」

〈ちぇっ、良いとこだったのに〉

私に身体を奪い返された春夏は反省なんて全然していない。

私は鷹峯さんに背を向けると、そそくさと枕元に置かれたままになっていた服に袖を通す。

ふと、真後ろに鷹峯さんの気配。

「……もういっそ、このまましません? こんなに挑発されて……私、眠れませんよ」

「っ……!?」

耳元に鷹峯さんの吐息。後ろからハグされて身動きが取れなくなる。

そりゃ、私だってドキドキした。航大にだって、自分からこんな風に積極的にいったことないもん。

それに色々ありすぎて傷心で、人肌恋しいのだって本当。

弱っている時に、毎日毎日こんなイケメンと一緒のベットで寝ていて、それで何事も起きないなんて、よく考えたらおかしくない??

〈ほんと、()膳食(ぜんく)わぬは女の恥よ?〉

「春夏は黙ってて!」

「……その急な独り言どうにかなりません?」

とはいえ、その一線を越えるには私にはあまりにもハードルが高過ぎる。顔が良くてセフレがたくさんいて誰とでもほいほい寝れる人と、万年偏差値五十女の私は違うんだ。

「とにかくもう寝ましょう! おやすみなさい!」

「……はいはい、おやすみなさい」

私は布団を頭まで被って鷹峯さんに背を向けた。




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