腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
はい、その通り。彼女は何でも私と張り合ってきて、勝手にライバルみたいに思われている。

お互いにフリーで境遇(きょうぐう)が同じ時は何とも思わなかったんだけど、私に航大という彼氏ができた途端、手のひらを返すように攻撃的な言動が増えた。

だから距離を置いていたんだけど、せめてもの仕返しにと結婚式に招待したのが完全に裏目に出た。私も人のこと言えないくらい性格悪いな。

ていうか航大、薄々分かってはいたけど女いたのか……。

何となくだけど、私と別れる前には既に別の女性がいたような気がする。

『わざわざありがとう。もう別れたから関係ないよ』

『そっか〜! 今度合コンしようね!(笑)』

何が(笑)だよ。ばぁーか。

「はぁぁぁ〜……」

何だかもう全てがどうでも良く感じて、私はスマホをテーブルに粗雑(そざつ)に投げて力なく机に突っ伏す。

「服でも買いに行きますか?」

「……へぇ?」

唐突な鷹峯さんの言葉に、私は一瞬意味が飲み込めなくて思わず間抜けな声を上げて机から顔を上げた。

「嫌いですか、買い物?」

「い、いえ……そんなことないですけど……」

買い物、むしろ大好きですけど。でも最近はお金も心の余裕もなさすぎてそんな発想すらなかった。

「じゃあ行きましょう。体調や身の安全を優先して最近はバイト以外ずっと家にいましたし、貴女もたまには気晴らししたいでしょう?」

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