腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
「ふふ、さすがにこれ以上何もしませんよ。ただ貴女の姿がとても魅力的だったのでつい、ね」

「っ……!」

そう言って鷹峯さんが私から離れ、こちらに背を向ける。

「あ、ちなみに私は特に女性の下着に好みなどありません。どのみち脱がすものなのでどんなものだろうが興味ありませんから」

「はぁっ? さ、最低っ……!」

なんだかんだ言いつつ、下着屋さんでも上下四セットを購入してもらった。本当にまったく、鷹峯さんには頭が上がらな過ぎてセクハラされてもあまり強く言い返せない。



「ふぅ……」

たくさん衣類を買ってもらって、他にも雑貨屋さんやインテリアショップなどを見て回ってものすごく充実した時間を過ごすことが出来た。

〈まるで本物のカップルみたいよねぇ♡〉

春夏もご満悦の様子だ。私は下着屋さんで繋いだ手を思い出す。

細くて長い女の人みたいに綺麗な指先、それでいて男の人らしく大きな手のひら。今は少しだけ離れているその距離がもどかしい。

もう一回、繋ぎたいな……。

そんなことを思って、勇気を出して少しだけ手を伸ばした。


(なに、あの二人……カップル?)

(まさか……あんな格好良い人に、あの女?)


そんな声が聞こえて、私は思わず出しかけた手を引っ込めた。


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