腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
しっかりと身体を抱き締められると、鷹峯さんの匂いに包まれる。私の耳はちょうど鷹峯さんの胸の位置にあって、どくんどくんと彼の鼓動が聞こえる。

あったかくて、心地良い。

ずっとこのまま、こうしていたい。




「……何かあっちの方うるさくない?」

「え〜? 分からなかった〜」




バックヤードの奥から人の声がする。恐らく会社の黒い関係など知らない一般の店員たちだろう。

「……ここで見つかると後々面倒(あとあとめんどう)ですね。我々は撤退(てったい)しましょう」

「は、はいっ……」

ずっとハグしているわけにもいかず、鷹峯さんはまた私の手を引いてくれる。

名残惜しかったけど、でも、手を繋ぐのもすごく(くすぐ)ったい気持ちになる。

〈こんなのされちゃったら……意識、しちゃうでしょ?〉

「っ……」

そんなの、当たり前だ。意識しない方が無理に決まってるよ。





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