腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
「うわぁ……」

鷹峯さんが予約したというレストランは、新宿にある一流ホテルの最上階にあった。私はそれを、首が千切れそうなくらい()()りながら口を開けて見上げている。

「さぁ、行きますよ」

「は、はいぃ……」

鷹峯さんは普段から割ときちんとした格好をしているから良いけれど、私は悲しいくらいばっちりショッピングモールデート仕様だ。ドレスコード大丈夫なの??

そんな私の心配を他所(よそ)に、エレベーターはぐんぐんと最上階へ向けて上っていく。

そして次に扉が開くと、目の前には和と洋を織り交ぜたような(きら)びやかな内装のレストランが広がっていた。一面ガラス張りの窓の向こうには、東京の夜景が一望できた。

「はぇ〜……す、すごい……」

〈きゃ〜! 私ここ来たかったのぉ〜!〉

春夏が黄色い歓声を上げる。

「鷹峯様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

ギャルソンが恭しく頭を下げて席を案内してくれる。ふかふかの床に足を取られないよう気を付けながら、私は案内された席に向かう。

丁寧に引いてもらった椅子にぎこちなく腰掛ける私に、鷹峯さんが可笑しそうに笑っていた。






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