腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
先程までの落ち着いた雰囲気とは一転、実年齢より幼く見える可愛らしい顔で、雛子ちゃんは恥ずかしそうに首を振った。

「というか、今更ですけど、ここ鷹峯先生のおうちなんですよね? なんだか勝手にお邪魔してしまって……」

「あ、それは良いの良いの! 言わなきゃバレない!」

バレなきゃ良いのかって言われそうだけど、バレなきゃ良いのです。

「あと、さっき言ってたことも非常に気になるんですが……鷹峯先生に、その……」

「ああ、セフレ? あ〜……あはは」

自分でバラしておいてなんだけど、鷹峯さんにめちゃくちゃお世話になっているというのにこんなプライベートなことを他人に話すなんてちょっと私、非礼過ぎやしないか。

そしてこの話題を自分から振っておいて、雛子ちゃんは顔を真っ赤にしてる。はぁ〜可愛い。

「まぁ鷹峯さんあの顔ですしね、女の子には困ってないみたいですよ? 困ってないっていうより、むしろ供給過多というか」

今更誤魔化しても仕方ないし、やんわりとそれだけ教えた。

「ああ……前も鷹峯先生言ってました……誰彼構わず……その……そういうことできるって……」

そういうこととは、つまりセックスのこと。でもそんな話をするくらいには、雛子ちゃんは鷹峯さんと親しい関係なのだろう。さすがの鷹峯さんも、誰彼構わず職場の若い女の子にそんな話をするとは思えないし。

そうなると、鷹峯さんと雛子ちゃんは何で親しくなったんだろうか。二人の関係について、今度改めて聞いてみようかな。

「聖南さんは、一緒に住んでいて危なくないんでしょうか……?」

「うへぇ?」

雛子ちゃんと鷹峯さんの馴れ初めに思いを馳せていた私は、唐突な質問に思わず変な声を出した。そういえばお風呂や下着屋さんのフィッティングルームで手を出されたといえば、出されたような……。

私の一瞬の間で、何かあったと気付いた雛子ちゃん。

「や、やっぱり一緒に住んでたら何かしら起こりますよね!? そういうものですよね!? つ、付き合ってたら、尚更ですよね!?」

うお、随分前のめりな。

「もしかして、あのイチャついてた彼氏と同棲してるの?」

「っ……!!」

可愛い反応で、答えはイエスだと分かった。

「そして彼氏が手を出してこないと」

「っ……」

おや、明らかにしゅんとしてる。

病室でもちゅうしちゃうくせに、家だと手を出さないのか……。

「私に魅力がないんでしょうか……」

うふふ、そんなわけないんだけどねぇ?

〈随分大事にされてるのね。胸元にキスマークまで付けられちゃって〉

あ、本当だ。雛子ちゃんは気付いてないみたいだけど、服で隠れるか隠れないかギリギリのところにばっちり赤い痕が付けられている。

〈ていうかそこまでしといて最後まではしないなんて……この子の彼はどんだけ強靭な精神の持ち主なわけ?〉

春夏の言葉に頷きかけたけど、よく考えたら鷹峯さんだって私にちょっかいかけることはあってもそれ以上は手を出してこない。まぁ鷹峯さんの場合は、セフレがたくさんいて私なんかを相手にする必要がないからだろうけど。
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