腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
「そんなわけないじゃない。雛子ちゃんは可愛いよ」

心からの言葉だったけれど、雛子ちゃんは浮かない顔のままだ。

「そうでしょうか……挙句の果てに、つまらないことで今喧嘩してしまっていて……」

落ち込んでいる様子の雛子ちゃん。せめてものお礼に、何か彼女のためにしてあげられることはないだろうか?

「あ……そうだ。雛子ちゃん、足だったらネイルいける?」

私はあることを思い付く。

「ネイルですか? はい、足ならOKですけど……」

質問の意図を図りかねて不思議そうな顔をしている雛子ちゃんをよそに、私はいそいそとクローゼットにしまってあったネイルセットを準備する。一時期物凄くハマっていたネイルアート、よく受付嬢仲間にやってあげていたのがこんなところで役に立つなんて。

「私のしみったれた話に付き合わせちゃったしさ、これ彼氏に見せて会話のきっかけにでもしてよ」

私はそう言うと、戸惑う雛子ちゃんの向かいに座り込み足の爪に可愛いネイルをしてあげた。
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