腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
出会い
そんなちょっとのミーハー心を胸に秘めて私は上の階に戻ると、さっそく鷹峯さん宅のインターホンを押した。すぐに男性の声で『はい』と応答があった。
「すみません、今日隣に引っ越してきた……あの、み、三浦、と言いますっ」
六月には入籍するし、私は未来の『三浦』姓を名乗る。まだ慣れなくて、少し緊張して吃ってしまう。
そんな短いやり取りの後、すぐにガチャリとドアが開いた。
……わお。
佐竹の奥さんが言っていた通り、本当に本物のイケメンが出てきた。
まず背が高くてスタイルが良い。顔が小さい。足が長い。
そして顔のパーツも黄金比率。すっと通った鼻筋に切れ長の瞳、さっぱりした顔立ちなのにどこか色っぽさも感じさせる口角の上がった薄い唇。
お医者さんと聞いてもう少し年上の人を想像していたんだけど、学生さんかと見まごうほど若くも見えるし一体いくつなんだろう? 年齢不詳だな。
私がそんな不埒なことを考えていると知ってか知らずか、鷹峯さんはにっこりと笑みを浮かべる。
細められた色素の薄い虹彩がきらりと金色に光った気がして、少しだけ胸がざわついた。
「これはこれは、わざわざご丁寧に。私は鷹峯と言います」
はい、知ってます。と口を滑らせそうになり慌てて閉口する。いけないいけない、怪しいやつが隣に住んでいると思われたくない。
代わりに、私は深々と頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします! 三浦と申します!これ、つまらないものですが……」
少しだけ見とれていたことを悟られないように、私は持っていた小箱を突き出す。有名パティスリーで購入した焼き菓子セットだ。
危ない、確かに私がフリーでもし合コンにこの人が来ていたら確実にロックオンしてしまうタイプのイケメンだった。グッジョブ、佐竹の奥さん。事前情報ナイスです。
「ありがとうございます……と、失礼」
鷹峯さんが包みを受け取ったタイミングで、彼のスマホが鳴った。彼は画面表示を見ると、初対面の私ですら分かるほどあからさまに嫌そうな顔で通話ボタンを押す。
「hello? ……sorry.I will consult with my boss about that. I have a visitor right now. Would you mind waiting for a while? I'll ring you back later.」
はぇ……すご。
早過ぎて何て喋っていたかは全然分からないけど、およそ日本人とは思えない流暢な発音だったように思う。
佐竹の奥さんは独身のお医者さんだって言ってたけど、見た目もイケメンで頭も良いだなんてなんということでしょう。お金も持ってるだろうし、きっとさぞモテモテライフを送ってるんだろうな〜。
「……失礼しました。仕事の電話です」
「いえ、お忙しいところお邪魔してすみません。では〜」
私は下世話な想像をしていたのを誤魔化すかのように、おほほと笑ってドアを閉めた。
あ、そう言えばこれから入籍予定のカップルってことを伝え忘れたけど、こんなハイスペックな人と昼ドラ展開になることはなさそうだしまぁいっか。たぶん、私のことなんて相手にしないタイプだろうし。
「すみません、今日隣に引っ越してきた……あの、み、三浦、と言いますっ」
六月には入籍するし、私は未来の『三浦』姓を名乗る。まだ慣れなくて、少し緊張して吃ってしまう。
そんな短いやり取りの後、すぐにガチャリとドアが開いた。
……わお。
佐竹の奥さんが言っていた通り、本当に本物のイケメンが出てきた。
まず背が高くてスタイルが良い。顔が小さい。足が長い。
そして顔のパーツも黄金比率。すっと通った鼻筋に切れ長の瞳、さっぱりした顔立ちなのにどこか色っぽさも感じさせる口角の上がった薄い唇。
お医者さんと聞いてもう少し年上の人を想像していたんだけど、学生さんかと見まごうほど若くも見えるし一体いくつなんだろう? 年齢不詳だな。
私がそんな不埒なことを考えていると知ってか知らずか、鷹峯さんはにっこりと笑みを浮かべる。
細められた色素の薄い虹彩がきらりと金色に光った気がして、少しだけ胸がざわついた。
「これはこれは、わざわざご丁寧に。私は鷹峯と言います」
はい、知ってます。と口を滑らせそうになり慌てて閉口する。いけないいけない、怪しいやつが隣に住んでいると思われたくない。
代わりに、私は深々と頭を下げる。
「よ、よろしくお願いします! 三浦と申します!これ、つまらないものですが……」
少しだけ見とれていたことを悟られないように、私は持っていた小箱を突き出す。有名パティスリーで購入した焼き菓子セットだ。
危ない、確かに私がフリーでもし合コンにこの人が来ていたら確実にロックオンしてしまうタイプのイケメンだった。グッジョブ、佐竹の奥さん。事前情報ナイスです。
「ありがとうございます……と、失礼」
鷹峯さんが包みを受け取ったタイミングで、彼のスマホが鳴った。彼は画面表示を見ると、初対面の私ですら分かるほどあからさまに嫌そうな顔で通話ボタンを押す。
「hello? ……sorry.I will consult with my boss about that. I have a visitor right now. Would you mind waiting for a while? I'll ring you back later.」
はぇ……すご。
早過ぎて何て喋っていたかは全然分からないけど、およそ日本人とは思えない流暢な発音だったように思う。
佐竹の奥さんは独身のお医者さんだって言ってたけど、見た目もイケメンで頭も良いだなんてなんということでしょう。お金も持ってるだろうし、きっとさぞモテモテライフを送ってるんだろうな〜。
「……失礼しました。仕事の電話です」
「いえ、お忙しいところお邪魔してすみません。では〜」
私は下世話な想像をしていたのを誤魔化すかのように、おほほと笑ってドアを閉めた。
あ、そう言えばこれから入籍予定のカップルってことを伝え忘れたけど、こんなハイスペックな人と昼ドラ展開になることはなさそうだしまぁいっか。たぶん、私のことなんて相手にしないタイプだろうし。