腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
たくさん迷惑をかけたのに、今まで追い出さずにいてくれたことに感謝しないといけないのに。私は鷹峯さんに感謝して、そして笑顔でこの家を出ていかないといけないのに。

「鷹峯さんの変態っ! 女好きっ! 潔癖症っ……!」

気付けば私の頬にはとめどなく涙が伝っていて、私は鷹峯さんの広い胸を拳で叩いていた。

「……」

鷹峯さんは何も言わない。

ああ、きっと嫌われた。完全に嫌われた。

元々迷惑な存在だったのに、これが決定打で完全にウザがられた。

どうしてこうなっちゃったんだろう。

なんで、どうして。

そんな思いが浮かんでは消えていく。

「……はぁ」

やがて俯いた私の頭上から深い溜息が聞こえ、私はビクリと肩を揺らした。

「言いたいことはそれだけですか? ……まず、美怜を連れ込んだのは軽率でした。貴女のシフトが変更になっていることを知らなかったとはいえ、あのような場面に遭遇させてしまったのは申し訳ありません」

「……」

静かな声でそう言葉を紡ぐ鷹峯さん。そんな素直に謝られてしまうと、途端になんて返したら良いか分からなくなる。

「でも、貴女がいて迷惑だなんて思ったことは一度もありません」

そして鷹峯さんはやっと私の目を見た。心臓が煩く鳴る。

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