腹黒天才ドクターは私の身体を隅々まで知っている。
元婚約者
リビングテーブルに置いてあったスマホがLIMEの通知を知らせる。何気なく画面を見て、そこに表示された名前に一瞬、思考が停止した。
ちょうど鷹峯さんからも見える位置にあったスマホを慌てて手に取るけど、たぶん気付かれた。
三浦航大。
酷い別れ方をした元婚約者の名前だ。
なんで、どうして? LIMEだってアカウントごと消えていたはずなのに……。
『突然ごめん
マンションに忘れ物しちゃってさ
鍵も置いて出ちゃったし、取りに行っても良い?
あんな出て行き方しちゃったから
直接会って謝りたいし』
文面は一区切りずつ、こう送られてきた。
「元彼です。忘れ物と……あと、会って謝りたいって」
鷹峯さんは別に何も聞いてこなかった。後ろめたいわけじゃなかったけれど、沈黙が怖くて私は自分から白状した。
「そうですか……で、貴女はどうしたいんです?」
「え? えっ、と……どうしたら、良いんでしょう……」
何かを試すようなその質問に、なんて答えたら良いか分からなくて思わず鷹峯さんに訊ねる。一瞬、鷹峯さんの雰囲気がピリついた気がした。
「……やめた方が良いですよ、忘れ物なんてどうせ嘘でしょう」
言葉少なに、けれどキッパリと鷹峯さんは言った。
「で、ですよね……」
これ以上鷹峯さんにこの話題を振るのはやめよう。元彼の相談をするなんてナンセンスだ。
それにどうせ終わった恋。私には鷹峯さんがいるし、謝られたところで復縁する気は毛頭ない。
でも……。
「……さて、私もシャワーを浴びてきます。先に休んでいて下さいね」
「はぁい」
でもやっぱり……元々は結婚までしようと誓った相手だ。あの別れ方じゃ私だってもやもやするし、直接会ってサヨナラするくらい、良いよね……?
鷹峯さんが浴室へ消えていったのを確認すると、私はスマホを手に取り航大へLIMEで電話をかけた。
「……もしもし航大? うん、私……良いよ、明日の夕方」
その時間なら、鷹峯さんは仕事でいないし。
〈ちょっと良いの? 鷹峯さんに言っておいた方が……〉
「ううん、言ったらそれこそ嫌な思いさせそうだし……黙っとく」
鷹峯さんが、扉の向こうで聞いていたことも知らずに。
ちょうど鷹峯さんからも見える位置にあったスマホを慌てて手に取るけど、たぶん気付かれた。
三浦航大。
酷い別れ方をした元婚約者の名前だ。
なんで、どうして? LIMEだってアカウントごと消えていたはずなのに……。
『突然ごめん
マンションに忘れ物しちゃってさ
鍵も置いて出ちゃったし、取りに行っても良い?
あんな出て行き方しちゃったから
直接会って謝りたいし』
文面は一区切りずつ、こう送られてきた。
「元彼です。忘れ物と……あと、会って謝りたいって」
鷹峯さんは別に何も聞いてこなかった。後ろめたいわけじゃなかったけれど、沈黙が怖くて私は自分から白状した。
「そうですか……で、貴女はどうしたいんです?」
「え? えっ、と……どうしたら、良いんでしょう……」
何かを試すようなその質問に、なんて答えたら良いか分からなくて思わず鷹峯さんに訊ねる。一瞬、鷹峯さんの雰囲気がピリついた気がした。
「……やめた方が良いですよ、忘れ物なんてどうせ嘘でしょう」
言葉少なに、けれどキッパリと鷹峯さんは言った。
「で、ですよね……」
これ以上鷹峯さんにこの話題を振るのはやめよう。元彼の相談をするなんてナンセンスだ。
それにどうせ終わった恋。私には鷹峯さんがいるし、謝られたところで復縁する気は毛頭ない。
でも……。
「……さて、私もシャワーを浴びてきます。先に休んでいて下さいね」
「はぁい」
でもやっぱり……元々は結婚までしようと誓った相手だ。あの別れ方じゃ私だってもやもやするし、直接会ってサヨナラするくらい、良いよね……?
鷹峯さんが浴室へ消えていったのを確認すると、私はスマホを手に取り航大へLIMEで電話をかけた。
「……もしもし航大? うん、私……良いよ、明日の夕方」
その時間なら、鷹峯さんは仕事でいないし。
〈ちょっと良いの? 鷹峯さんに言っておいた方が……〉
「ううん、言ったらそれこそ嫌な思いさせそうだし……黙っとく」
鷹峯さんが、扉の向こうで聞いていたことも知らずに。