ファーストソング

彼からイヤホンを受け取り、片耳にはめる。
彼も反対側のイヤホンを装着する。


「…!」
思ったよりも近い。

息がかかるほど近い。


病弱だった私が同世代の男の子と、こんなに近づくことが全くなかった。
慣れない状況にドキドキする。


「えっと。ほらコレな。カバーなんだけどさ。俺の自信作!」
「…うん。」
「んじゃ流すぞ?」


そう言うと彼は、再生ボタンを押す。

━♬
片方の耳から音楽が流れてくる。
心地のいい男性の声。

学校で録音したのだろう、加工されてない歌。

それでもどこか惹きつけられる歌声。


思ったより高音もでてる。

伸びも綺麗。


正直舐めていた私はかなり驚かされた。
「ねぇ、この曲以外はあるの?」と、つい声に出してしまうほどに私は彼の歌を求めていた。
< 10 / 77 >

この作品をシェア

pagetop