ファーストソング

彼は嬉しそうに「あるよ!」と言って、数曲聴かせてくれた。
その中に私が作った曲もあった。

正直かなり嬉しかった。

『フユ』に憧れているのが丸わかりで、むずがゆい気持ちだった。


「どう…?俺の声?」
いつもとは違う、少し不安そうなか細い声で聞いてくる。

捨てられた犬みたい。
なんか可愛い。


「うーん。無加工でコレならいいと思うよ。」
「本当!?」
「私、嘘はつかないから。」
「っしゃぁああ!!」


大きい声でガッツポーズをとる彼に、不安が募る。

確かに歌声はすごくいい。
多分私よりずっといい。

けど、私は自分以外に曲を作ったことはない。
自分の曲ならキーや、リズムなど得意方面に寄せる事が出来る。
だから同じような曲ばかり作っていた。

私と彼では得意ジャンルは違う。
出しやすいキーも何もかも違う。

彼の理想とする曲をつくれないかもしれない。

そんな不安がよぎる。
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