ファーストソング

それと同時に担当医の言葉を思い出す。

━「あくまでも安静に生活して1年です。無茶をすればそれだけ期間も短くなります。」


そう。

私に無理は禁物。

今は元気でも、そのうちガタがくる。


それが怖くないと言えば嘘になる。


でもそれ以上に彼に曲を作ってあげたいという気持ちもある。

彼の希望の曲を作れるのか、私の体が最後までもつのか、不安でいっぱいだ。

だけど、
最後ぐらい楽しみたい。

後悔なくお別れを告げたい。

毎日ここに通う彼に恩返しをしたい。

でもそれは私一人で決められることじゃない。
担当医の判断が必要不可欠。

だからごめん。
少しだけ時間稼ぎさせてもらうね。


「喜んでる所申し訳ないけど、私からの課題。」
「へ?」
「『フユ』の最後の曲『サヨナラ』を録音してきて。」
「『サヨナラ』を!?」
「うん。それで判断する。」
「まじ!!?」
「おおまじ。」
「分かった!!早速、調整してくる!!」
「あ、曲録音できるまで来なくていいから。それに集中して。」
「了解した!」


そう言って彼はまたもナースさんに怒られながら、嵐のようにさっていくのだった。
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