ファーストソング

「なんて名前なの?」
「佐久間夏輝くんっていいます。」
「かっこいい名前だね。」
「そうですかね…?」
「はは。それで佐久間くんがどうかしたのかい?」


落ち着いて話を聞いてくれる櫻井先生に安心しながら、全てを話すことにした。


「私パソコンで曲を作ってネットにアップロードしたことがあるんですけど…。」
「え!凄いじゃないか!」
「あ、ありがとうございます。そ、それで…、曲を作ってあげたくて…。」
「うんうん。」
「でも、無理しないようにっていう約束だったから、どこまでやっていいのか相談をと思いまして。」
「そっか。そういうことか。」
「はい。」


先生は少し考え込むようにして顎に手を置く。
机の上にあるのは私のカルテだろう。
びっしりと書き込まれている。


「うーん。曲を作る知識が僕にないから分からないんだけど…。曲を作る作業はどんな感じなのかな?」
「基本的にパソコンでやるので、楽器を演奏したりはしません。」
「歌は歌うのかい?」
「はい。」
「口ずさむ程度なら問題ないけど、それでも大丈夫なのかな?」
「はい!口ずさめれば問題ありません!」
「なら、大丈夫かな。」
「本当ですか!?」
「うん。本当。」
「ありがとうございます!」


よかった。

これでアイツに曲を作ってあげることができる。


「ただし!少し条件があるかな?」
「じょ、条件ですか?」
「うん。」


なんだろう…?
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