ファーストソング

11

櫻井先生の気遣いが身に染みる。

それにパソコンを使う時間が制限されたとしても、ノートでアイディアとかを纏める時間はある。
うん。全然無理な時間じゃない。


「櫻井先生、ありがとうございます!」

「曲作り頑張ってね。」
「はい。」


そう言って会議室を出る。

これから忙しくなる。そう思い足早に自分の部屋に戻る。

どんな曲にしよう。
やっぱり佐久間夏輝っぽい暑苦しい曲かな?それとも楽しそうな曲?
あえてのシリアスなバラード曲でも面白そうかも!

期待と楽しみに胸を膨らませ病室の扉を開ける。

━ガラ


「千冬、どこに行ってたの?」

「…お姉ちゃん。」


病室の中には、私の姉である長瀬千穂(ながせちほ)の姿が。

少し驚きながらもお姉ちゃんが持っている紙袋を見て納得する。


「お姉ちゃんごめん。重かったでしょ?」
「それより、どこ行ってたの?」
「あー。櫻井先生の所。」
「アンタ、また無理したんじゃ!」
「違うよ。ちょっとね。」

「ちょっとねって…。お母さんたちに報告するからね。」

お姉ちゃんの言葉に思わず「ダメ!」と大きな声をだしてしまう。
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