ファーストソング

12

「なんて名前なの?」
「佐久間夏輝くんっていいます。」


え?
俺の話…?

ん、声が小さくてところどころしか聞こえない。


「うーん。曲を作る知識が僕にないから分からないんだけど…。曲を作る作業はどんな感じなのかな?」
「基本的にパソコンでやるので、楽器を演奏したりはしません。」


曲作りの話、だよな?


「簡単な条件だからね。…条件は二つ。」
「はい。」


曲作りに条件?何で?


「うん。いい返事だね。一つ目は、体調を優先すること。体調が悪い日は申告してその日の曲作りはやめること。」
「はい。」
「毎朝看護師さんが検温しにくると思うけど、その時に必ず体調に問題ないか報告してね。」
「分かりました。」
「二つ目、決まった時間に曲作りをすること。」
「決まった時間…ですか?」
「規則正しい生活が必要だからね。パソコンを触るのはその時間のみ。」
「ちなみに時間って。」
「そうだね。16時から19時までかな。19時から夕飯の時刻だからそれまでに終わらせること。」
「・・・はい。分かりました。」


その時間は俺がいつも面会に行く時間…。

というか条件出されるほど、千冬ちゃんの病気って悪いの?
何の病気なのか全く分からないけど、見た目に反映されてないってことは内臓系とかだよな…。

そんな辛い中俺のために曲を作っていいか病院の先生に確認してくれてる。

俺は胸にヤモヤ感を抱え込みながら、その場から逃げ出した。
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