ファーストソング

「…それって、どこまで。」
「どういう病気かとかは聞いてない。けど…、余命宣告を受けたことは聞いた。」
「誰から?」
「…それは、その…ごめん。言えない。」


その言葉で察しがつく。

櫻井先生や鈴さんは守秘義務があるから、絶対に言わない。
この二人以外で余命宣告の件を知っているのは私の家族だけ。

しかもこの時間コイツと会う可能性があるのは、たった一人。

今日来るはずだったのに来なかったお姉ちゃんが、佐久間夏輝に教えたんだ。

どういった経緯で教えたのかは分からない。
けどそれで佐久間夏輝はかなり精神がやられている。

私の病気のせいで…。

佐久間夏輝は、夏輝は全く悪くないのに。


「…それで、佐久間夏輝はどうしたいの?曲、諦めるの?」


悪くないと分かっていても口調が強くなってしまう。

だってコイツにだけは、夏輝だけには知られたくなかったから。
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