ファーストソング

慎太郎の言葉で目が覚めたような感覚に陥る。

そっか。
まだ挽回のチャンスがあるのか。

千冬ちゃんのことを知って、謝れるチャンスがまだ俺にはある。
そう思ったら居ても立っても居られなくなり、俺は鞄を掴んで走り出していた。


「慎太郎!俺、いってくる!!」
大きい声で言う俺に両手をブンブン振りながら「おう!いってらー!!」と叫ぶ慎太郎。


前後の席でたまたま仲良くなったけど、コイツと友達になれて俺は幸せ者だ。

学校から病院まで少し距離があるけど、俺は構わず走る。
早く千冬ちゃんに会いたくて、なんて謝るかなんて今は考えられない。
俺の気持ちを素直にぶつけてそれから土下座してでも謝ろう。


「はぁ…はぁ!よっし…!!ここを曲がれば病院っ!」


嬉しさから更にスピードをあげて走る俺は前を見ていなかった。

━ドン。
思いっきり誰かとぶつかる。


「あっ!す、すいません!!」
慌てて振り向き謝る。

「っ…!大丈夫ですよ。君は大丈夫?」


そこには千冬ちゃんによく似た女性が尻もちをついていた。
< 46 / 78 >

この作品をシェア

pagetop