ファーストソング

…他人の空似じゃなかった。


「…やっぱり。」
「もしかして、千冬に曲作りを頼んだ男の子?」
「そ、そうです!!それ俺です!!」
「いつも千冬がお世話になっております。千冬の姉の長瀬千穂です。」
「あ、俺は佐久間夏輝です。ってか俺お世話なんてしてないですよ。むしろ…。」


お世話になってばっかり。

俺が急に黙り込んだからか、静寂なまま時間が進む。
何か言わないと!と思うに口からは何も出ない。

先に口開いたのは長瀬さんだった。


「…少し話します?」


風になびかれた髪を耳にかけながら俺にそう聞いてきた。

千冬ちゃんについて知れる。
なんで入院しているのか、どうして『フユ』を引退したのか。

これで明確になる。

俺は唾を飲み込み、「はい。」と答えていた。
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