ファーストソング

10

「だからすいません。」


口からでたのは俺の本当の気持ち。


「…そう。貴方も千冬も馬鹿ね。」
「千冬ちゃんは分からないですけど、俺は…まぁ、そうですね。馬鹿なのかもしれないっす。」
「私に貴方を止める権利はないわ。だから好きにしなさい。」
「はい!」

「でも、千冬を傷つけるようであれば私は容赦しないから。」


切れながらの目が俺を射抜く。
その目は少し震えているようだった…。


「はい。その時は俺と喧嘩してください。」
「ふふ。譲る気ないのね。」
「長瀬さんも…。ですよね?」
「それはだって、私、千冬のお姉ちゃんだから。」


そういう長瀬さんはどこか遠くを見ていた。

まるで自分に言い聞かせるみたいに…。


そのまま長瀬さんとはお別れして千冬ちゃんの病室に向かう。
決意をしめした俺だが、千冬ちゃんの病室へ向かう俺の足取りは重かった。


俺の気持ちを千冬ちゃんは許してくれるだろうか。

不安からどんどん下を向いてしまう。
1歩1歩ゆっくり進んでいく。

そしてついに辿り着き、俺は大きく深呼吸をした。
< 51 / 75 >

この作品をシェア

pagetop