ファーストソング

14

俺にとって素を出せる時間は少なかった。

家に帰れば弟、妹たちの世話。
親からは高校出たら働いてくれっていう圧。

そんな俺が夢について真剣に語れる時間。

素直になれる時間。


「だから今を変えたくなくて、見て見ぬふりをしていたんだ。」
「…うん。」


でも…!


「ちょっと考えれば分かることだった。病院で入院して目に見えるところに怪我がない。ということはって…!」


俺は甘えていただけだった。
千冬ちゃんなら大丈夫だろうって。

だけど…俺…!


「けどやっぱり俺は千冬ちゃんと一緒にいたい。友達でいたい…!本気で音楽の話が出来る千冬ちゃんともっと仲良くなりたい!だからごめん!!」

「なんで謝って…?」

「千冬ちゃんの残り時間俺にください!!!」

そう言って俺は思いっきり頭を下げた。
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