ファーストソング

「うし。じゃあ後頼んだ」
「分かったよ」


ご飯を食べ終わり、玄関に向かいながらそう告げると和真が玄関まで見送りにきてくれた。


「あー…。竜のことは気にすんなよ」
「うん。大丈夫だよ」
「ん。じゃあ行ってくるわ」
「気を付けてね」
「あいよ」


俺はそう言うと、玄関からでて下にある店に入っていく。
ガラガラと音を立てて足を踏み入れると、中は大盛況だった。


「あー!夏輝!いいところにきたね!これタクさんところ持ってて!」

「はいはい!」


母さんから渡された生ビールを持っていく。


「また手伝いかい?夏輝くんもえらいねぇ」
「うす。タクさんも飲み過ぎないでくださいよ」
「はは!大丈夫だよ、まだ二杯目だからな!」
「それ、本当に大丈夫かよ?」


大盛況な店の中はほとんど常連客でうまっている。

特にこのタクさんは俺が小さい頃からこの店に通っている常連の中の常連。
偶に母さんたちが忙しいときメニューとってきてくれたりする。

それ以外はテレビが見える席を陣取って、生ビールと母さん特性のだし巻き卵を食べながらボーっとしている。


「それよりよ。夏輝くんは進路決まったのか?」
「え?」
「ほら高校三年生だっただろ?」
「あー。まだ…っすね」
「えぇ!?まだ考えてないのかい?就職か進学かだけでも決めないとね」
「進学はしないっすよ」
「じゃあ就職かい?」
「…じゃないっすかね?」
「じゃないっすかねって自分のことだろう?」
「まだ悩み中っす」


本当は決まってるけど、言えるわけないか。
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