恋するブラトップ
episode.2

あぁ。今日も長い一日が始まる。

熱いコーヒーで無理やり目を覚まし、血色が良くなるメイクをし、人の流れに身を任せて電車に乗る。

毎日同じ繰り返し、そうまるで大量生産されたロボットみたいだ。何年、何十年同じ動きをするのだろうか。


電車に揺られながら、私はいつ性欲を落としたんだろうか、と考える。

10代、20代の頃は人並みに持ってたはずだ。

そう、落としたのは前の彼氏と付き合い出してからだ。


何故付き合ったのだろう。

惰性で付き合っていた。

お互い家賃を折半できるのが楽で一緒に住んでいた。同棲ってやつだ。

あいつとはすべての相性が悪かった。

心も体も。


エッチがいつの日か苦痛になった。


舐められるのが嫌で仕方がない。唾液は汚物だ。
ディープキスは汚物の押し付け合いだ。
想像するだけで吐きそうになる。



汚くて汚くて。


胸を触らないでほしい。ただでさえ、ないのがコンプレックスなのに、つまむように触るのをやめてほしい。

あと秘部を舐めないでくれ。次の日痒くて仕方ないんだ。
指を入れないで、痛くてしょうがない、AVの見過ぎなんだよ。


ある日私はあいつに言った。

「何も触らないで、入れるだけにして。」


なんて悲しいエッチだろうか。まるでオナホになった気分だ、1秒でも早く終わらせてほしくて膣を締める。



こんな関係終わりがくるに決まっている。


そう、あいつとは終わったんだ。


ただ…

別れ際に言われた言葉が私の胸に突き刺さったままだ。きっと一生取れないだろう。


「ずっと言おうと思ってたんだけど、チヒロちゃんってマグロだよね、不感症なんじゃないの?」



マグロ、マグロ、マグロ。


お寿司のマグロは好きだけど。


お前が下手なんだと思っていた、そうか私が不感症なのか。



エッチのプロで下ネタクイーンのサヤに相談した事がある。

「前戯ないの?それ絶対気持ち良くないから!!
チヒロちゃん!好きな人とエッチをするんだよ!
テクニックじゃないから!そんな男さっさと捨てて幸せになるエッチをして!絶対気持ちいいから!」


「私胸ないよ。ブラトップだし。」


「先端部分があったら胸なくても大丈夫だから!そんなの関係ないから!あとブラトップはマズイ。可愛い下着買って。とにかくちょっとでも良いなって思ったらヤッてみて!!」


どれだけ友達に言われたとしても、もう二度とエッチはしたくない。
ブラジャーもつけたくない。

だけどハグはしてもらいたい。ハグをして、添い寝をしてもらえたらそれでいい。

できたら吊り目のイケメンがいい。


降りる駅に着くまでの時間で、私は好きなアニメのキャラが私をハグしてくれるのを妄想する。










< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop