【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
このまま話していても、僕も彼女も幸せには慣れない。早くこの場から立ち去ろうと、僕は「っていうわけだから、ごめんね」と背を向けた。
「つ、月島く、」
あの女子生徒が言う通り、確かに付き合ってから互いを知っていく方法もあるかもしれない。けれど好きな人がいる僕には代わりの誰かと付き合うなんて、そんな器用な事は出来ないのだ。
そもそも知ったって、すずちゃん以上の女では無いと思うが。
それにしても勢いがありすぎた告白に、少し体力的にも精神的にも疲れてしまった。今日は早く寝て、明日の小テストに備えよう。
そう思いながら、真っ赤に染まった夕焼けを見上げた僕はふと足を止める。
そして後ろを振り返った。
「あぁでも、1つ聞いてもいい?」
彼女はまだ呆然と立ち尽くしたままで、突然話し掛けられたことに動揺しながら「なに?」と震えた声で返す。
「好きな子に話しかけるには、どうしたらいいのか分かる?」
「は?」
いつも桔平に相談していてばかりだったから、偶には女性の意見も求めてみよう。そう気まぐれに思った僕は直球に尋ねる。
「いやぁだって、話しかけようとしても緊張してどもっちゃうし。横を通るたびに心臓が口から出てきそうって言うか、同じ空気を吸うだけでも烏滸がましくて呼吸止めちゃったりとかするし。同じ学校ってだけで目も耳も幸せっていうか、存在自体に感謝しなくちゃいけないって言うか」
「・・・えっと、」
「いい加減僕だって前に進みたいんだよ。桔平だってこの前初めてちゅうしたって自慢してきたしさ。羨ましいのなんのって。あぁでも僕、絶対あの子を目の前にしたらひよっちゃって出来ない気がする」
「あ、っと、」
思い出したのは先週の空き時間。ヤケに機嫌が良かった桔平が何か聞いて欲しそうな顔をしていたから、しょうがなく「何かあったの?」と聞いてあげたのだ。