【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
「その好きな人って、」
「言うわけないじゃん。名前言ったら、絶対君も好きになっちゃうし」
「お、男?!」
「いや天使」
「は?」
こう言う時、もう少し自分に語彙力があれば、彼女をもっと素敵な言葉で例えられるのに。
今まで国語の勉強を疎かにしてきた自分の過去が悍しい。
本来ならばもっとこの女子生徒にもすずちゃんを見習えと声を大にして言いたいが、自分以外の誰かにじろじろ見られるのもすずちゃんの何かが減るからやめておこう。
「で、どうしたらいいと思う?」
「・・・・・」
「えっ無視?」
「そんな、」
さっきまで真っ赤だった顔が急に真っ青になっていく。
そして彼女は信じられないと云わんばかりにふるふると首を横に振って、ぼそぼそと口を開いた。
「え?僕あの子の声以外上手く聞き取れないんだけど、何て言ってるの?」
「月島くんがっそんな人だとは思わなかった・・・っ!もういい!!!!!」
そう叫んでは彼女は一目散に走り去っていってしまった。
まるで僕が酷いことをしたみたいじゃないか。せっかく人が尋ねているのに無視して姿を消すとは何事。
(何か、体力削られた気がする)
疲れが一気に襲ってきて重々しいため息を吐いた。
「・・・ま、いっか。別に全員に好かれようなんて思ってもないし」
大体そんな人だとは思わなかったって、だから言ったのに。僕のことあまり知らないのに、よく告白出来るよねって。