【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
「はぁ・・・今日も尊い。どうしてそんなに可愛いの。好きが口から溢れる」
「・・・りっちゃん。俺もう部活行くからな」
「何で同じクラスじゃないんだろう。ねぇどうしたら同じクラスになれると思う?」
「知らねぇよ。んじゃ、また明日な」
日高すずは今日も可愛い。国宝、いや世界遺産級。彼女が生きている世界線に産み落としてくれた僕の両親に感謝。お陰様で僕の見える景色は入学して以来ずっと、ウユニ塩湖をも超える絶景が広がっている。
そんなこんなで僕はすずちゃんを見守ってきたわけだが、一向にお近づきになれていなかった。
今朝も昇降口で見かけたから挨拶でもしようと思ったが、何と声を掛けようか迷っているうちに居なくなってしまった。「おはよう」のたった4文字が、なぜあの時出てこなかったんだろうと今日もまた後悔の嵐。
「うん。明日は絶対に、話し掛ける。もう決めた」
桔平が部活に向かい、1人になった僕も帰ろうかと席を立つ。鞄を肩に引っ掛けて、廊下へ出た。
いつもすずちゃんの教室の前を通って帰ることが日課だった僕は、今日も隣のクラスを眺めながら通ろうとした───ところで、僕の足はピタリと止まる。