【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
(す、すずちゃんがいる・・・!それもひとりで)
まだ教室の中に1人の生徒が残っていた。神は僕に味方をしたのか、残っているのは日高すずちゃんだったのだ。
これは声を掛ける絶好のチャンスなのではと僕は息が荒くなる。しかし、彼女はまだ席に座ったままで、こちらからでは何をしているのかがよく見えなかった。
(こんにちは?いや、お疲れさま?この前の模試の結果凄いね、とか)
色々と頭の中でシュミレーションをしてみる。考えた結果「先生どこに行ったか知ってる?」に決めた。
そしていざ、話し掛けようと一歩を踏み出した時。彼女の横顔がちらりと見えた。その表情に僕の足は一旦その場に留まる。
(少し様子が変かな?僕の気のせい?)
よくはっきりとは分からないが、すずちゃんの表情はいつもよりも若干陰りを帯びていた。そして俯いている彼女の背中はなぜか小さく感じる。いや、元々華奢だから小さいのだが。
いつももっと頼り甲斐のある雰囲気を纏っているのに、今はなんか、こう、力なく丸まっていた。