【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
ひとりでてんやわんやしていると、彼女は急に席を立つ。
なぜか僕は反射的に隠れるようにして身を潜めた。
どうやらすずちゃんも帰るらしい。鞄を持って教室を出ると僕に背を向けるようにして昇降口へ向かっていった。
(・・・ま、またチャンスを逃してしまった)
追いかけるかどうか迷った。しかし突然声を掛けるのもどうかと思い、僕はその場でゆっくりと立ち上がる。
このままじゃ友達どころか顔見知りにもなれずに卒業するかもしれない。好きな人と仲良くなることへの難しさに打ちひしがれていると、先ほどまで彼女が座っていた席に一冊のノートが置いてあることに気づいた。
周りに他の生徒がいないのを確認して教室に入って、そのノートを手にとってみる。
キャンパスノートでもルーズリーフでもなく、1センチほどの厚みがある方眼紙のノート。
「見ても、いいかな」
あまり良くないことだとは分かっていても、一度手にとってしまえば気になるもので、ぱらぱらと好奇心でそのノートを捲ってみる。