【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
恍惚とした表情で今日も今日とて彼女を観察していると、後ろから勢いよく頭を叩かれた。「暴力反対!」と文句を告げると、さらに追い討ちをかけるように一発。
容赦なく攻撃を繰り出す奴は、目を半開きにさせて僕を見ていた。
「りっちゃん、流石にガン見しすぎだって」
「止めないで桔平。今必死に心のメモリーに録画してるんだから」
「怖いわ。仲良くなる以前に怖がられても知らないからな」
突然友人に対して暴力を振るようなこの男の名前は佐野桔平。
僕の好きな人を知っている唯一の人間だ。
せっかく人が至福の時間を過ごしていたと言うのに、桔平は「ストーカーかよ」と邪魔をしてくる。
「僕をその辺のストーカーと一緒にしないでくれる?そんな生ぬるい気持ちじゃないんだけど」
「犯罪者を超える気持ちも中々ヤバいと思うけどな」
言っておくが、もちろんストーカーではない。常にどこにいるか目を光らせているけれども、ストーカーでは断じてない。
まだ家の場所だって知らないし、文房具とか私物を盗んだ事はない。
つまり僕は恋する健気な男子高校生だ。
今のところ彼女に対して卑しい目で見たことなんて、一回たりともない、はず。
「あのさぁ、りっちゃん」
こんなに純粋にすずちゃんを想っている僕に対して、呆れた表情で桔平はため息を吐く。
全国の恋する青少年に失礼な顔をしている奴は、けろっと思うがままに口を開くのだ。
「いい加減、好きならアタックしろよ」
ハイ出た。彼女がいる奴は簡単にそんなことが言えるんだよ。
「むむむむむ無理!!!!いきなりそんなこと出来るわけないじゃん!!!!」
僕は勢いよく首を横に振った。