【完】月島くんは日高さんのことがお好き。
「私だってさ、勉強したくない時だってあるんだよ」
「? そりゃあ誰だってそうでしょ」
「勉強してなくても点数取れるほど、私頭良くないんだよ」
「・・・」
「それなのに、」
すると彼女はまた悲しい顔をして唇を噛む。
「クラスの子も先生も『どうしたの?』『私らしくないね』って言うの」
「私らしいって何?」と、彼女の悲痛な叫びに、僕の心臓もぎゅっと締め付けられる。
「最初はね、良い点とったら両親も先生も喜んでくれて友達も凄いねって褒めてくれて、だからもっと勉強頑張ろうって思ってたんだ。それに勉強したら絶対に結果はついてきてくれるし、将来への幅も広がるから、頑張っても損はないって」
「うん」
「・・・でも、今は少ししんどくなってきちゃった」
「そっか」
「少しでも点数落としたら“私らしくない”って言われて、先生にも“何でもっとレベルの高い大学を目指さないんだ”って呼び出されてさ」
「勉強してないから点数取れないの当たり前じゃん」と胸の内を吐露し続けるすずちゃん。
きっと両親も友だちも先生も、彼女に期待しているのだ。だからこそ、そういった言葉をすずちゃんに掛けるのだろう。
それぞれが日高すずの理想の姿を追い求め、彼女はその理想通りの人間でいようと無理をする。