【完】月島くんは日高さんのことがお好き。


「はぁ、何であんなに可愛いんだろう」
「顔やばいけどさ、日高さん来てるよ」
「え?!ど、どこ、いた!!!!」


桔平に言われるがまま、顔を上げると、廊下から教室に顔を出すすずちゃんの姿があった。どうやら迎えに来てくれたらしい。ほらみろ、全世界の男子ども。すずちゃんの彼氏は僕なのだ。

すずちゃんはふるふると手を振って、僕を呼んでいる。クッソ可愛い。こんな彼女の隣を歩けるなんて、彼氏は幸せ者だろう。あぁ、彼氏って僕のことだった。優越感に浸る僕の傍で桔平は「顔やベぇ」とぼそりと呟く。もちろんその言葉は僕に向けられているのだろう。


「早く行ってやれよ。一緒に帰る約束してんだろ」
「言われなくても」


さっさと行け、と煙たがれるようにして教室を追い出された僕。お待たせ、と彼女に駆け寄ると「全然待ってないから大丈夫だよ」と笑ってくれた。優しすぎて好き。僕の彼女になってくれないかな。あぁ、そういえばもう彼氏だった。

桔平に別れを告げて、僕たちは歩き出す。周囲に生徒がいないからといって、校内で手を繋ごうとすると「恥ずかしいからだめ」と怒られるのだ。だから手を繋ぐのはいつも学校を出てからである。

しばらく他愛もない話をしていた僕ら。学校の敷地を出たところで、すずちゃんはふと何かを思い出したかのように「あ、そういえば」と声をあげた。




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