【完】月島くんは日高さんのことがお好き。


すると、彼女はもじもじと恥ずかしそうに身を捻らせる。顔も赤く染めている。

僕は思う。この人もしかして暑さにやられて、熱中症になっているんじゃないだろうか。ほら、屋内でも熱中症になるってニュースでも言っていたし。

すずちゃんも、暑いからといってお腹を出して寝てはいないだろうか。いつかお近づきになれたら、冷感素材のタオルケットをプレゼントしよう。そうしよう。


(いや、でもすずちゃんのことだから体調管理もばっちりだろうなぁ)


その辺りも絶対に抜かりなく過ごしているに違いない。


「月島くん?」
「え?あ、ごめん。続けていいよ」
「先週・・・廊下でぶつかっちゃって私が転んだ時あったでしょ?」
(そんなことあったっけ)
「前を見ていなかった私が悪いのに、月島くんが『よそ見してた、ごめんね』って謝ってくれたことがあって、優しいなぁって思ったの」


そう言われた僕は暫くの沈黙を経て、ピンとくる。


(・・・あぁ、思い出した)


あの時は確か、友達と談笑しながら歩くすずちゃんが見えたのだ。食い入るようにガン見していたら、前から歩いてきた人とぶつかってしまったのだ。やけにあの時の僕はぼーっとしていた。

だって聖母マリアのような慈愛に満ちた表情のすずちゃんから目が離せなかったのだ。

確かに『(すずちゃんが今日も尊くて)よそ見してた、ごめんね」と謝った気がする。


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