Tear Flowes〜絶望の向こう岸〜
マーティーの言葉は、まるで呪いの言葉だった。あれだけ迷っていたフィオナの中から、怒りと憎しみだけが残り、ナイフを持つ手の震えが収まる。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

大声を出し、フィオナはナイフを振り上げてマーティーに突き刺そうとする。しかし、振り上げたその手は誰かの手によって固定される。手を掴んでいたのは、病院にいるはずのエヴァンだった。

「……よかった、最悪の事態になってなくて」

「エ、ヴァン……？」

エヴァンは頭に包帯を巻かれ、体のあちこちにもガーゼなどで傷を覆われている。その痛々しい姿に、フィオナの瞳に涙が浮かんだ。

「君に、この男を殺してほしくない。こんな男を殺して、君の手を汚してほしくないんだ」

「……どうして止めてくれるの？私が、あなたの幼なじみだから？」

フィオナは涙をこぼしながら訊ねる。すると、エヴァンに抱き締められた。温もりに包まれ、フィオナの心が少しずつ凪いでいく。握り締められていたナイフは滑り落ち、フィオナはエヴァンの背中に腕を回していた。
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