Tear Flowes〜絶望の向こう岸〜
「エヴァン、私ーーー」

どんな敵を相手にする前よりも緊張し、頬が赤く染まっていく。熱が体に集まり、うまく言葉を紡げない。それでも、声を震わせながらフィオナはその言葉を生まれて初めて口にした。

「あなたのことを愛してるの。やっと、この気持ちがわかった」

そう言葉にした時、エヴァンは驚いた顔を見せていた。そして、フィオナの肩に触れて興奮しながら言う。

「フィオナ！今、笑えてるよ！とっても綺麗で可愛い笑顔になってるよ！」

「……えっ？」

フィオナはそっと口角に触れる。あれほど硬くなっていた口角は、自然と上げられるようになっていた。ずっと笑いたいと思っていた。笑顔を取り戻したいと思っていた。それが、叶ったのだ。

「私、笑えているのね！」

くしゃりと笑ったフィオナの瞳から、涙がこぼれていく。エヴァンも泣きながら笑っていた。そして、泣きながら抱き締め合う。

そんな二人を祝福するかのように、優しい風が吹いた。それはまるでシオンからの贈り物のようにフィオナは思う。

数年越しに、フィオナの顔に笑顔という花が戻った特別な日だった。
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