離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
 離婚など、一年半もあれば仕事の間にどうにかできたはずだ。
 だけど、離婚届を今も提出できないまま持っている俺は……、きっと花音に執着し始めているんだろう。
 結婚当初は、俯いて毎日暗い顔をしていた花音が、今はしっかりと視界に“俺”をいれている。
 そんな花音が、どうしてこんなにも“欲しく”なってしまうんだ。
 花音の赤面した顔を見た瞬間、どうしようもないほど独占欲を駆り立てられてしまった。
 艶やかなその髪も、透き通るような白い肌も、意志の強い瞳も、何ひとつ手離したくない。
 彼女のために離婚すべきだという冷静な考えが、簡単に崩れ去っていく。
 今ここで彼女と向き合うことを放棄したら、俺はきっと、一生後悔する。

「離婚はしない」
「え……?」
「お前が欲しくなった」
 そう自分勝手に言い放つと、俺は驚き目を丸くしている花音の後頭部に手をまわし、小鞠ごと抱きしめて強引にキスをした。
 この行動が彼女を苦しめると分かっていても、止めることなど、できなかった。

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