離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
はからずも、私は改めて、期間限定で彼と同棲する腹を括ったのだった。
〇
同棲再会初日。黎人さんは車で私たちを迎えにきた。
私は無言のまま車に乗り込み、マンションへと向かう。
後部座席で小鞠をあやしながら、過ぎていく夏の景色を茫然と見つめていると、彼が話しかけてきた。
「もう引っ越し業者とうちの手伝いが合流したそうだ。バタバタするのは一時間ほどで終わるだろう」
「そう」
「小鞠が新しい環境に馴染めるといいけどな」
普段と変わらない態度で話しかけてくる彼に、どう反応を返したらいいのか分からない。
会話が弾まないままマンションに到着すると、本当に作業はほとんど終わっていた。
購入したときは新築だった、広尾の3LDKの高級低層マンション。一軒家に二人きりは気持ち的にプレッシャーがあるという私の勝手な理由で、二人で住むのならマンションがいいと要望したのだ。かといって、実家が平屋だからタワーマンションも落ち着かないという私のわがままを聞いてもらい、この家に住むことになった。
部屋に足を踏み入れると、なぜか胸の奥がきゅっと苦しくなった。
室内は結婚当初の記憶のままで、グレーと白を基調とした家具も、何もかも変わっていなかったから。
結婚してすぐ不安だった気持ちや、黎人さんになんとか歩み寄ろうと頑張っていた気持ちが蘇り、あの頃にはもう二度と戻れないことに心臓が痛くなる。
私たちは今、“終わり”に向かってこの部屋に戻ってきたのだ。
そんな私の気持ちなど何も知らない黎人さんは、颯爽と部屋の案内を始める。
「花音の部屋はとくにいじっていないが、何かリフォームしたい箇所があったら言ってくれ」
「……あの、私のベッドが見当たらないんですが」
一番に気になったことを聞くと、黎人さんはさらっと答える。
「小鞠を一緒に見れたほうがいいだろう、移動した」
「え……?」
「安心しろ、離してある」
慌てて寝室を確認しに行くと、ベッドはツインルームのように離してあった。
けれど、同じ空間の中でこの人と寝るなんて、無理だ。
明らかに嫌そうな顔をするところだったが、今はまだ周り人がいる。気まずい空気にさせるわけにはいかない……。
「花音様、お荷物お持ちしますね」
「あっ、すみません、ありがとうございます」
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同棲再会初日。黎人さんは車で私たちを迎えにきた。
私は無言のまま車に乗り込み、マンションへと向かう。
後部座席で小鞠をあやしながら、過ぎていく夏の景色を茫然と見つめていると、彼が話しかけてきた。
「もう引っ越し業者とうちの手伝いが合流したそうだ。バタバタするのは一時間ほどで終わるだろう」
「そう」
「小鞠が新しい環境に馴染めるといいけどな」
普段と変わらない態度で話しかけてくる彼に、どう反応を返したらいいのか分からない。
会話が弾まないままマンションに到着すると、本当に作業はほとんど終わっていた。
購入したときは新築だった、広尾の3LDKの高級低層マンション。一軒家に二人きりは気持ち的にプレッシャーがあるという私の勝手な理由で、二人で住むのならマンションがいいと要望したのだ。かといって、実家が平屋だからタワーマンションも落ち着かないという私のわがままを聞いてもらい、この家に住むことになった。
部屋に足を踏み入れると、なぜか胸の奥がきゅっと苦しくなった。
室内は結婚当初の記憶のままで、グレーと白を基調とした家具も、何もかも変わっていなかったから。
結婚してすぐ不安だった気持ちや、黎人さんになんとか歩み寄ろうと頑張っていた気持ちが蘇り、あの頃にはもう二度と戻れないことに心臓が痛くなる。
私たちは今、“終わり”に向かってこの部屋に戻ってきたのだ。
そんな私の気持ちなど何も知らない黎人さんは、颯爽と部屋の案内を始める。
「花音の部屋はとくにいじっていないが、何かリフォームしたい箇所があったら言ってくれ」
「……あの、私のベッドが見当たらないんですが」
一番に気になったことを聞くと、黎人さんはさらっと答える。
「小鞠を一緒に見れたほうがいいだろう、移動した」
「え……?」
「安心しろ、離してある」
慌てて寝室を確認しに行くと、ベッドはツインルームのように離してあった。
けれど、同じ空間の中でこの人と寝るなんて、無理だ。
明らかに嫌そうな顔をするところだったが、今はまだ周り人がいる。気まずい空気にさせるわけにはいかない……。
「花音様、お荷物お持ちしますね」
「あっ、すみません、ありがとうございます」