離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
その考えは本心であり、彼女に始めに伝えなければいけないことだと思っていたから。
花音はそれを拍子抜けするほどすんなりと受け入れ、自分も花のために人生を捧げられたらそれだけでいいと返した。
本人がそう言うなら、それでいいんだろうと、その時は無理やり納得したのだ。
でも、実際に花音と籍を入れてから、俺は彼女との距離感を測りかねるようになる。
いくら政略結婚とはいえ、どうにか歩み寄るべきかだろうと考えたけれど、山のように仕事が来て、彼女とのことは後回しになる日々。
花音も、俺と無駄に親密になることを極端に避けているようだったので、俺もそうしないと二人の間のバランスが取れなくなると感じた。
お互いのプライベートには踏み込まない関係性。これでいいんだと、何度も自分に言い聞かせた。
仕事が最優先なのは変わらないのだから、中途半端に踏み込んでも彼女を傷つけるだけだと。
そう思っていたのに、俺はあの日、“間違った”。
〇
“間違った”あの日にことは、今でも鮮明に思い出せる。
あれは、結婚してから約二カ月が過ぎた頃のこと。
あまりに素を出さない花音に寂しさを感じて、本当の彼女を暴いてやろうと躍起になってしまったのだ。
なぜなら毎日、彼女の暗い顔しか見たことがなかったから。
俺との結婚に本当に後悔がないのか。今ならまだ解放してあげられると、最後の“確認”をしたくなったのだ。
あれは俺の、最後の“賭け”だった。
「最後に聞いておくが、本当にいいんだな」
「覚悟はとうに……決めております」
「“覚悟”ねぇ……」
片手でネクタイを緩めながら、組み敷いた花音のことをベッドの上から見下ろし、「こんなに震えてるのに?」と、呆れたように言い放つ。
それでも花音は、目を逸らさずに、負けじと俺の目を見つめ返してきた。
透き通るように白い肌に、意志の強さを感じる黒い瞳……、胸まで伸びた艶やかな髪の毛。
黙っているだけで男が寄ってきそうな容姿をしているのに、今まで色恋には一切興味がなく、誰とも付き合ったことがないと聞いた。
ずっと、花と……『葉山家』と向き合って、生きてきた彼女。
そのまっすぐさが眩しくて、それと同時に、怖かった。
俺なんかが彼女の人生に参加してもいいのだろうかと。
花音はそれを拍子抜けするほどすんなりと受け入れ、自分も花のために人生を捧げられたらそれだけでいいと返した。
本人がそう言うなら、それでいいんだろうと、その時は無理やり納得したのだ。
でも、実際に花音と籍を入れてから、俺は彼女との距離感を測りかねるようになる。
いくら政略結婚とはいえ、どうにか歩み寄るべきかだろうと考えたけれど、山のように仕事が来て、彼女とのことは後回しになる日々。
花音も、俺と無駄に親密になることを極端に避けているようだったので、俺もそうしないと二人の間のバランスが取れなくなると感じた。
お互いのプライベートには踏み込まない関係性。これでいいんだと、何度も自分に言い聞かせた。
仕事が最優先なのは変わらないのだから、中途半端に踏み込んでも彼女を傷つけるだけだと。
そう思っていたのに、俺はあの日、“間違った”。
〇
“間違った”あの日にことは、今でも鮮明に思い出せる。
あれは、結婚してから約二カ月が過ぎた頃のこと。
あまりに素を出さない花音に寂しさを感じて、本当の彼女を暴いてやろうと躍起になってしまったのだ。
なぜなら毎日、彼女の暗い顔しか見たことがなかったから。
俺との結婚に本当に後悔がないのか。今ならまだ解放してあげられると、最後の“確認”をしたくなったのだ。
あれは俺の、最後の“賭け”だった。
「最後に聞いておくが、本当にいいんだな」
「覚悟はとうに……決めております」
「“覚悟”ねぇ……」
片手でネクタイを緩めながら、組み敷いた花音のことをベッドの上から見下ろし、「こんなに震えてるのに?」と、呆れたように言い放つ。
それでも花音は、目を逸らさずに、負けじと俺の目を見つめ返してきた。
透き通るように白い肌に、意志の強さを感じる黒い瞳……、胸まで伸びた艶やかな髪の毛。
黙っているだけで男が寄ってきそうな容姿をしているのに、今まで色恋には一切興味がなく、誰とも付き合ったことがないと聞いた。
ずっと、花と……『葉山家』と向き合って、生きてきた彼女。
そのまっすぐさが眩しくて、それと同時に、怖かった。
俺なんかが彼女の人生に参加してもいいのだろうかと。