離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~
今、結婚してからは彼の笑顔を初めて見た。まさかこんな形で、ずっと見てみたいと思っていた表情を見ることになるなんて、思わなかった。
「色々気づくのが、遅すぎたのね……」
すべての気持ちに諦めをつけるように、ひとり苦笑まじりにそうつぶやく。
どう考えても彼は家の中より外でいる方が生き生きしている。私なんかに縛られないで自由に幸せを選んで、どこまでも羽ばたくべき人だ。
葉山家も、いつまでも三鷹家に頼り切りでなく、新たな一手を打つべく行動するほうがいい。……私がそうしていく。きっと。
一瞬乱れた気持ちを落ち着かせていると、黎人さんに挨拶をした女性たちが、私の横を通り過ぎながらキャーキャーと楽しそうに盛り上がっている。
「三鷹代表と目が合っちゃった~! やばい、今日も本当かっこいい」
「あの笑顔破壊力ありすぎ! あーあ、婚約者とかいるのかなー? 代表とだったら結婚したーい」
なるほど。会社でも結婚は明かしていないのか。
だったらなおさら、都合がいい。
ふっと下を向いて思わず笑ってしまうと、黎人さんが私に気づいて、名前を呼んだ。
「花音。こっちだ」
「お待たせしてしまい、申し訳ございません」
冷たい瞳に怯むことなく、私はにっこりと笑みを向ける。
さっき通り過ぎていった彼女たちに伝えてあげたい。
……離婚するので、どうぞ私たちの関係にはおかまいなく、と。
〇
渋谷まで黎人さんの運転で向かい、確かに少し奥まった場所にその厳かなレストランはあった。
重たい木のドアを開けてもらい中に入ると、予約されていた個室の部屋に案内される。
二人にはもったいないほどのスペースがある部屋に、真っ白なクロスがかかったダイニングテーブルと、重厚感溢れる椅子が置いてある。
黎人さんはジャケットを脱いで預けてから、私たちは向かい合うように座った。
メニューはいつも黎人さんが勝手に決めてくれるので、すべて彼に任せている。
私は普段からお酒を飲まないので、ノンアルコールを頼んだとしても怪しまれないし、まだ幸いにもお腹はそこまで出ていない。
静まり返った空気の中、黎人さんが頼んだ赤ワインと、私が頼んだ炭酸水が運ばれてくる。
乾杯もせずにお互い一口飲むと、黎人さんは、あくまで義務的な態度を崩さずに、私に質問を投げかけてきた。
「色々気づくのが、遅すぎたのね……」
すべての気持ちに諦めをつけるように、ひとり苦笑まじりにそうつぶやく。
どう考えても彼は家の中より外でいる方が生き生きしている。私なんかに縛られないで自由に幸せを選んで、どこまでも羽ばたくべき人だ。
葉山家も、いつまでも三鷹家に頼り切りでなく、新たな一手を打つべく行動するほうがいい。……私がそうしていく。きっと。
一瞬乱れた気持ちを落ち着かせていると、黎人さんに挨拶をした女性たちが、私の横を通り過ぎながらキャーキャーと楽しそうに盛り上がっている。
「三鷹代表と目が合っちゃった~! やばい、今日も本当かっこいい」
「あの笑顔破壊力ありすぎ! あーあ、婚約者とかいるのかなー? 代表とだったら結婚したーい」
なるほど。会社でも結婚は明かしていないのか。
だったらなおさら、都合がいい。
ふっと下を向いて思わず笑ってしまうと、黎人さんが私に気づいて、名前を呼んだ。
「花音。こっちだ」
「お待たせしてしまい、申し訳ございません」
冷たい瞳に怯むことなく、私はにっこりと笑みを向ける。
さっき通り過ぎていった彼女たちに伝えてあげたい。
……離婚するので、どうぞ私たちの関係にはおかまいなく、と。
〇
渋谷まで黎人さんの運転で向かい、確かに少し奥まった場所にその厳かなレストランはあった。
重たい木のドアを開けてもらい中に入ると、予約されていた個室の部屋に案内される。
二人にはもったいないほどのスペースがある部屋に、真っ白なクロスがかかったダイニングテーブルと、重厚感溢れる椅子が置いてある。
黎人さんはジャケットを脱いで預けてから、私たちは向かい合うように座った。
メニューはいつも黎人さんが勝手に決めてくれるので、すべて彼に任せている。
私は普段からお酒を飲まないので、ノンアルコールを頼んだとしても怪しまれないし、まだ幸いにもお腹はそこまで出ていない。
静まり返った空気の中、黎人さんが頼んだ赤ワインと、私が頼んだ炭酸水が運ばれてくる。
乾杯もせずにお互い一口飲むと、黎人さんは、あくまで義務的な態度を崩さずに、私に質問を投げかけてきた。