離婚するので、どうぞお構いなく~冷徹御曹司が激甘パパになるまで~

“その日”まで side黎人

▼“その日”まで side黎人

『黎人さんがやりたいと思う仕事を取る、その一択しかありません』
 仁のメッセージを見て何か嫌な予感がして思わず駆けつけると、花音が珍しく声を荒立てていたので驚いた。
 しかも、内容から察するに、仕事のことを仁が暴露してしまったようだ。
 いつ話そうかとずっとタイミングを見計らっていたというのに……。そう思ったが、花音が思っていることをそのまま聞けて、じつは嬉しかった。と同時に、彼女にますます惚れ直してしまった。
 『伊達に仮面夫婦やってきてない』という言葉に、思わず吹き出す。
 ああ、俺が婚約した女性は、こんなにも強く芯の通った人だったのだと、再確認した。
 花音の言う通り、悩まずにすぐ打ち明けるべきだったと、心の中で猛省する。
 仁が冗談交じり風にちょっかいを出していたけれど、あれは半分本気で花音のことを気に入っていた。じつは腹黒で人間嫌いなあの仁が、一瞬であんな風に心を開くなんてこと、ありえない。
 とはいえ俺たちの中を引き裂くようなことをする気は絶対ないと思うが、二人きりでのランチを途中から阻止することができて、本当によかった。
 花音は意外とこういう面で鈍感なので、ハラハラする。
 じつは大学でも何人もの学生に告白されていたと、お母様から聞いた。まあ、全部「今はお花以外考えられない」と断っていたようだけれど。
 海外に行くことが心配なのは、じつは俺の方だなんて、口が裂けても言えない。
 だから、再びアメリカに行くまでの約一年間、花音と小鞠と、沢山の時間を過ごしたい。
 そう思った俺は、旅行をすることを計画した。
 


「わー! 海に夕日が沈むよ! 見て、小鞠ちゃん」
 宮古島にある別荘に来た俺たちは、窓から見える海を眺めていた。
 数年前に両親が購入したこの別荘。ベランダには温水プールがあり、その向こう側はすぐに白い砂浜で、海が見えるという構造になっている。
 平屋で横に広くつくられており、リビングはパーティーが余裕でできるほど広い。
 前々から、花音が宮古島の別荘に行ってみたいと言っていたので、ようやくそれがこの日叶った。両親も『建てたはいいものの全然遊びに行っていなかったので泊まってくれて嬉しい』と喜んでいた。
 気軽に各地に別荘を購入する癖も、そろそろ考えものだとは思うが、花音と小鞠が喜んでくれたならそれでいい。
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