俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
祐吾の二週間の海外出張が決まった。
ちょうど奈々の排卵予定日に被る。
「今月は無理かぁ」
奈々はカレンダーを見ながら聞こえないようにぼそりとつぶやいた。
「奈々、何か元気ないな」
「そんなことないよ」
「俺に隠し事か?」
「そんなのあるわけないじゃない。ただ、海外出張のとき……」
”排卵予定日なんだ”と言うのは飲み込んだ。
付き合う当初から、祐吾の仕事の邪魔はしたくないというのが奈々のモットーだ。それは結婚した今でも変わらない。
「えっと……寂しいなって」
それは本当のことだ。嘘ではない。
祐吾の海外出張は頻繁にあり、その度に奈々は寂しい気持ちになる。
「一緒に行くか?」
「行くわけないでしょう。もう、知ってるくせに」
奈々は奈々で自分の仕事に責任を持っている。いくら寂しいからといって祐吾の出張に着いていくほど子供ではない。
「奈々、おいで」
祐吾が両手を広げた。
奈々は素直に寄っていく。
抱きしめられるととたんに安心する。
そして触れるだけの優しいキスを交わした。
「いつも寂しい思いをさせてごめんな」
「そんなこと。いつもお仕事お疲れ様です」
「奈々もな。愛してる」
”私も”という言葉が発せられる前に口を塞がれ、そのままベッドへ押し倒される。
その日は図らずも甘い夜になった。