俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
五月にもなると朋子のお腹は大きくなっていた。この頃にはさすがに上司にも報告済みで、産休に入る前の仕事の引き継ぎも始まった。
奈々も一部引き継ぐことになり、今日は朋子と並んで業務を教えてもらうことになる。
開口一番、朋子は奈々に謝罪をした。
「迷惑かけてごめん」
「迷惑だなんてそんな」
奈々は首をふるふると横に振る。
「奈々は優しいからそうやって言ってくれるけど、世の中いろんな人がいるんだなって実感してる」
朋子は深いため息をついた。
「何かあったの?」
「んー、妊娠って喜ばしいことじゃない?でも中にはよく思わない人もいるってこと。こうやって仕事を人にお願いしなきゃいけなかったり、それを快く思わない人もいるわけよ。それに私は派遣だから産休イコールこの会社を退職だよ。もし復帰するなら、今度は別会社に派遣になっちゃうな」
「そうなんだ」
「ここは居心地がよくて好きだったんだけどな」
「そうだよね、比較的人間関係いいもんね。でも、朋ちゃんの赤ちゃん楽しみにしてるね」
「ありがとー」
お互いにこりと笑い合ったものの、それぞれの心は複雑な心境だった。