俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい
奈々は元々朋子と同じ派遣社員だった。ある時、課長の推薦もあり社内試験を受けて契約社員に合格した。それだけ見ればとても恵まれているように思う。派遣から直雇用に変わったのだ。他の派遣社員から見れば羨ましい限りだ。
だが、改めて会社の一員として見ると、契約社員は社員とは違う。給与面も諸手当も待遇も、社員とは別の規則があることに気づく。
奈々は改めて就業規則を読んでみた。契約社員でも産休育休は取ることができる。派遣社員とは違いちゃんと元の所属に復帰することも明記されている。
だがやはり社員との格差もあった。社員は子どもが中学校入学前まで時短勤務が使え、契約社員は三歳になるまでしか使えない。更に社員には育児支援金が出るのに契約社員にはそれがない。
「……こんなに違うんだ」
別にお金がほしいわけではない。だけど社員と同じように働いているのに、未来を担う子供のことなのに、こんな格差のある制度になっていることに憤りを覚えた。
一方で、やはり正社員は試験を受けて受かっているのでそれなりの待遇がもたらされるのはおかしいことではない。
「私は就活失敗したからなぁ……」
自虐的な呟きは自分の心を痛めつける。
それでも奈々が派遣から契約社員にランクアップしたのはきちんと試験を受けてのことだし、そもそもこの会社で働いていなければ祐吾にだって出会えていない。
悔やむよりも今を大事にしよう。
祐吾は結婚しても変わらず奈々を溺愛している。その愛を一身に受けて、奈々は幸せでいっぱいなことを再確認した。